キロクの同意確認画面の2つ目には「身体障害、知的障害、発達障害や精神障害が原因となって、考えることや意思表示をすることができない状態ではありませんか?」というチェック項目があります。
これを見て「障害のある人はセックスに同意する能力がないというのか」と勘違いしてしまう方もいらっしゃるかもしれません。
しかし「障害者はセックスをしてはいけない」とか「障害者とセックスをするのは加害だ」というようなルールは、どこにも存在しません。
重要なのは「障害があるかどうか」ではなく、「今この瞬間、自分の意思を自由に考え、表明できる状態にあるかどうか」です。
この記事では、障害による性的同意への影響について考えていきましょう。
「心身の障害」が性的同意に影響するのはなぜ?
2023年に施行された改正刑法(不同意性交等罪)は、性的同意が成立しない状態として、「心身の障害によって、性交等に係る判断をするに至ることができない状態」を明示しました。
ここで重要なのは、「障害があること」自体が要件ではないという点です。
法律が問題にしているのは「その障害によって判断ができない状態にあるかどうか」という一段階踏み込んだ条件です。
同じ障害があっても判断能力には個人差がありますし、その能力を発揮できるかどうかも、状況によって大きく異なります。
なので、法律では「この障害があれば同意は無効」という一律の判断を採用していません。
キロクの開発の際に弁護士の監修を入れた理由は、このような法律の繊細な要件を、実際の場面に落とし込む必要性があったからです。
どんな状態だと「判断できない」と考えられるの?
キロクの確認項目では、「身体障害、知的障害、発達障害や精神障害が原因となって、考えることや意思表示をすることができない状態ではありませんか?」と問いかけています。
しかし実際には、障害の種類によって、意思決定に影響が出る場面はさまざまです。
知的障害のある方の場合、性的行為の意味や結果を十分に理解できていない状態で、求められたから「いいよ」と答えてしまうことがあります。
これは言葉の上では「YES」でも、内容を理解したうえでの同意とはいいがたいものです。
発達障害を抱える方は、意思表示をするための心理的なハードルが高く、嫌だという気持ちをうまく表現できないケースもあります。
精神障害のある方だと、たとえば躁状態のときには、普段とはまったく異なる判断をしてしまうことがあります。
あるいは、解離という症状が出ているときには、その瞬間に自分の意思として何かを選択するという感覚自体が損なわれているかもしれません。
身体障害のある方については、意思はあるのに身体的にそれを表明する手段がない、というケースが考えられるでしょう。
また、日常的な介助関係によって生じる権力の非対称性が、「断りたくても断れない」という状況を作り出してしまうリスクもあります。
上記はあくまでも一例であり、「この障害がある人は、こういう症状がある」という絶対的な指標ではありません。
いずれの場合も、焦点は「どんな障害があるか」ではなく、「今この場で、この人は自分の意思を自由に表明できる状態にあるか」という一点に絞られます。
障害理解は、排除ではなく権利のために
この確認項目は、障害のある人を性的関係から排除するためのものではありません。
むしろ逆で、障害のある人が主体的な権利の主体として尊重されるために必要なものです。
適切な状態・環境・関係性のもとで、障害のある人が性的関係を築く権利は当然あります。
この確認項目は、その権利を否定するのではなく、その権利が守られる条件が整っているかを問いかけるものです。
不同意性交罪は、医療や福祉の知識を持たない一般人も対象となる法律である以上、完璧な配慮と完璧な対応を求めているわけではありません。
しかし、相手の反応に違和感があったり、心配に思う部分があったりしたら慎重に接するというのは、障害の有無を問わずコミュニケーションの基本です。
「処罰される可能性があるから」ではなく、お互いに良い関係を築くための確認事項だと捉えてみてくださいね。

