性的同意サービス「キロク」で問われる確認事項は、全部で10項目あります。
これらは弁護士監修のもと、不同意性交の定義と照らし合わせて作成したものですが、男女ともに不安が拭えないでいる方もいらっしゃるでしょう。
今回から全10回にわたって、キロクの確認事項にはどのような意味があるのか、その理由も含めて性的同意について解説していきます。
DVや虐待だけが暴力なの?
キロクの同意確認画面の1つ目の項目には「相手から暴力を振るわれたり、言葉で脅されたりしていませんか」と書かれています。
この内容は、一見するとDVや深刻な虐待をイメージさせるため、多くの人は「自分とは無縁だ」と感じるかもしれません。
しかし「暴力」という言葉が指す範囲は、殴る・蹴るといった行為だけではありません。
怒鳴り声や、不機嫌さによるコントロール、無言のプレッシャーもまた、暴力のひとつです。
刑法で脅迫が禁じられているのはなぜ?
2023年7月13日に施行された刑法改正により、これまでの「強制性交等罪」と「準強制性交等罪」が統合され、新たに「不同意性交等罪(刑法177条)」が新設されました。
これまでの法律との大きな違いは「暴行・脅迫があった場合」から「同意がなかった場合」へと転換した点にあります。
そして、同意を無効にする事由として「暴行または脅迫」「威迫」を条文上に明示しています。
つまり、形式的にチェックが入っていたとしても、それが恐怖や強制力のもとでなされたものであれば、法的には「同意」として認められない可能性があるのです。
キロクがこの確認項目を最初に配置している意味は、まさにここにあります。
同意の記録をとる前に、そもそも同意が成立しうる状況であるかどうかを問うことが、この項目の役割なのです。
言葉の暴力とはどのようなもの?
身体的な暴力だけでなく、言葉の暴力も深刻な問題です。
ここで難しいのは、「暴力を受けている」と本人が気づきにくいケースが多々あるという点です。
「明確に脅されたわけではないけれど、断ったときの相手の反応が怖くて、気づいたら従っていた」
「怒鳴られたことはないが、機嫌が悪くなると空気が重くなるから、嫌でも合わせてしまう」
このような経験は、暴力や脅迫という言葉とはなかなか結びつきにくいものです。
しかし心理学の観点からは、こうした支配的な関係は、相手の意思決定の自由を侵害するものとして扱われます。
また、人は強いストレスや恐怖を感じると、抵抗したり逃げたりするのではなくではなく、固まって動けなくなることがあります。
もちろん、実際の法律や裁判の場では、密室での言葉の暴力の有無を正確に判断できるとは限りません。
それでも、自分自身の「嫌だ」という気持ちを大切にするためにも、言葉の暴力についての知識を持っておくことが大切です。
同意の際には安全で対等関係を何よりも優先しよう
性的同意をめぐる議論では「どのタイミングで確認すべきか」「どう言葉にすればいいか」ばかりに焦点が当たってしまいます。
でも、何より重要なのは「そもそも対等に意思表示できる関係かどうか」という問いです。
恐怖や支配のある関係のうえに、本当の意味での同意は成立しません。
キロクが10項目ある確認事項の冒頭にこの問いを置いているのは、同意の大前提として「安全で対等な関係性」を確保するためです。
同意の記録は、その関係性の上で初めて意味を持つもの。
お互いにモヤモヤを抱えるような結果にならないためにも、最初の項目を何よりも優先してチェックしてみてくださいね。

